【Multipolar】
安定した国際秩序を形成する定型的な理論の三つ目が、多極平和論。複数の国や地域が均衡して世界の平和を維持する形を言う。さまざまな形態が考えられる。例えば、民主主義や自由経済を国家運営の柱とする米欧や日本の主要7か国(G7)、経済的な先進国である主要20か国・地域(G20)、国際的な平和と安定を維持する国際連合など国際機関が担う場合だ。また、冷戦期の米ソ二極世界後に誕生した欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)などの地域的枠組みが強まったことで、米国の単極平和ではなく、欧州やアジアなどいくつかの勢力が「こぶ状」に存在する多極構造の存在も指摘された。しかし、世界のリーダーが不在の中で各国の利益を調整する機能が失われ、米国によるイラク戦争やロシアによるクリミア掌握などで国連安全保障理事会は明確な態度を示すことができず、多極平和論の効力は発揮できていない。