サイバー空間

【cyber space】
 サイバー空間を正確に定義しようとすると、複雑で分かりにくい定義になる。だが簡単に言えば、サイバー空間とは、デジタル情報を伝達・交換・共有するためのネットワークである。
 ただしサイバー空間に対してはいくつかの誤解や正確ではない見方がある。
第一に、サイバー空間とインターネットは同義ではない。サイバー空間の構成要素は少なくとも、(1) インターネット、(2)インターネットに接続されていないクローズド・ネットワーク、(3)これらネットワークに接続された(されうる)コンピュータ端末、サーバ、記憶媒体、その他電子機器等が含まれる。
 第二に、サイバー空間を単に「仮想空間」「デジタル空間」と捉えるのは正確ではなく、サイバー空間は「物理空間」に存在・依存している。確かに情報やデータは「仮想」「デジタル」であるが、それを保存・流通させるためには物理的機器・インフラが必要である。例えば、インターネットは光ファイバー、海底ケーブル、衛星等の通信チャネル、DNS(Domain Name System)サーバ等の物理インフラに支えられている。
 第三に、安全保障分野ではサイバー空間を「グローバル・コモンズ(世界規模の公共財)」と位置づけることもあるが、これも必ずしも正確ではない。サイバー空間は「競合性」も「排除性」もあり、誰でも自由に対価を払わずアクセス・利用できるものではない。また、サイバー空間の構成要素の多くは民間企業・団体が所有・運営・管理する。陸・海・空・宇宙の自然空間とは異なり、サイバー空間は所与のものではなく、人の手で慎重に管理されなければ、維持されることさえままならない。