文民統制の方法論

文民統制の方法についてはふたつの相反する考え方がある。政治指導者が軍事作戦に関し方針的な事項のみを示し細部についてはできるだけ軍隊の指揮官に任せる客観的な統制と、戦争を軍隊の指揮官のみに任せず政治指導者が作戦の細部にわたるまで統制すする政治指導者主導の統制の方法である。客観的な統制の手法は、現在でも文民統制の方法論の主流として幅広く支持を得ているが、軍事政策を実質的に軍隊の指揮官に全て任せてしまうことはあまりに危険であるとする意見も根強く存在する。エリオット・コーエンは、リンカーン、クレマンソー、チャーチル及びベングリオンは、軍隊の指揮官の専門性を認めて政治家は介入すべきではないとする客観的な統制の手法をしばしば否定したと指摘している。これらの偉大な政治家たちは軍隊の指揮官の意見に従順なだけではなく、積極的に軍隊の指揮官に疑問を質し、叱咤激励し、自ら提案して意見を調整し、時には自らの考えで命令を下すことがあった。また、軍隊の指揮官との意見の違いを認め、時には自らの拙い決断を取り下げ、考えを変えたこともあった。現在も、このふたつの文民統制の方法論の是非が模索され続けている。

「安全保障用語」編集部