パワーシフト

【Power Shift】
勢力が均衡している状態が崩れ、ひとつの覇権国から他の覇権国へと力が移行すること。パワートランジション(力の移行)とも言う。国際秩序の担い手である支配国が、新たに台頭する挑戦国と摩擦や対立を繰り返し、国力の低下や抑止力の減退によって新興勢力を基軸とする新たな秩序へと移行する。この過程は平和的に起こる場合もあれば、大戦争が生じた歴史もある。現代では、第二次世界大戦後に米国を中心に構築された「自由で開かれた国際秩序」に対し、台頭する中国が独自の秩序構築に動いている。また、現代のパワーシフトは必ずしも国から国への力の移行だけでなく、情報社会の発展により、国境や地域を越えたテロやサイバー攻撃など「力の拡散」も起きていると、ジョセフ・ナイは「スマート・パワー」(The Future of Power、2011年)で指摘している。

「安全保障用語」編集部