クラウゼヴィッツ,カール・フォン [1780-1831]

【Carl von Clausewitz】
プロイセンの軍人・軍事思想家で最終階級は少将。現代でも広く読まれる『戦争論』は七年戦争とナポレオン戦争をつぶさに研究した成果で、急逝後、マリー夫人が出版したもの。革命後のフランスでは、士気の高い市民兵を動員して大規模な国民軍を維持することが可能となり、損害を恐れることなく決戦を求めることができた。軍の規模も小さく、決戦で自軍を失うリスクを負うことができない旧体制国家にとっては驚愕だった。クラウゼヴィッツ自身、1793年の第一次対仏同盟に13歳の下士官として従軍して以来、1815年にワーテルロー近傍で軍団参謀長としてナポレオンの敗北を知るまで、旧体制の側で新しい戦争の様相を実体験し、その本質を究明するために多くの著作を残した。近年欧米において『戦争論』が改めて評価されているのは、現代における政治と軍事の関係についての示唆に富んでいるから。有名な「戦争とは他の手段をもってする政治の継続にほかならない」との一節は戦争(軍事)が政治目的を達成するための手段であることを明確に示している。また、政治目的を決める権限は政府のみにあることも明らかにしており、軍に対する「政治の優先」あるいは「シビリアンコントロール」という視点が軍事的にも合理的なことを示唆している。