民主平和論

【democratic peace theory】
民主主義国家同士は戦争しない、という理論。国際政治学の中で、「法則」に最も近いといわれる。1980年代にマイケル・ドイル(Michael Doyle)らによって提唱され、1990年代以降、平和のメカニズムを解明しようとする多くの研究が生まれた。メカニズムは大きく分けて2種類ある。1つは民主主義の制度による制約で、国会承認などの手続きを経ないといけないため戦争が抑制される。また、言論の自由や野党の存在によって意図が相手国に伝わりやすいことが平和に寄与するとも考えられている。もう1つは話し合いによって問題を解決するという規範に基づく。しかし、民主主義国家が非民主主義国よりも平和愛好的だというわけではない。民主主義国家が非民主主義国家に戦争を仕掛けることはしばしばある。冷戦後、民主平和論は米国の安全保障戦略の重要な柱となり、1990年代、ドイル論文はワシントンで最も多く読まれた論文だといわれた。抑止するのが難しい国家が核兵器を保有する危険が生じ、体制変革が模索されたのも民主平和論に基づく。非民主主義国からすると体制変革は最大の脅威となる。